03

子供の頃、小人の話が好きだった。
主人公の男の子は、その小人たちに選ばれて仲間になる。
そして、小人たちの山を守る。

僕はその話を本で読んで以来、小人に選ばれる日を夢見ていた。
正確に言えば、小人みたいなモノにだ。
なぜなら、僕の町には小人の住むような山はなかったのだから。

あれから、僕はいろんなものに選ばれてきた。
小学4年生のときは僕の描いた絵が特選に選ばれたし、
5年生のときは、学級委員に選ばれた。
中学1年生のときに、クラスのリレーの選手に選ばれた。
中学2年生のときは、下級生の女の子からチョコレートを渡す相手に選ばれた。
とにかく、、たくさん選ばれてきた。
でも、僕が選ばれたいのはそうゆうのじゃなかった。
僕は、小人に選ばれたかったのだ。



「つまり、おまえが選ばれたかったのは、、コレにだろ?」

そう言うと、Mは僕の手を自分のペニスにもっていった。

僕は、思わず声を出して笑った。
Mのペニスは僕の知る限りどちらかといえば小さいほうだ。Mのお決まりの冗句だ。
僕は、そうゆうMのことが大好きだった。

僕たちは、Mの部屋で今日2度目のSEXが終わり、
布団の上に素っ裸で寝転んで、寝物語をしていたとこだ。
あと数ヶ月で30になるMのおなかにはそろそろ中年太りの兆しが見れる。

「うーん、小人とはさ、SEXできないんだ。」僕はそう言った。これは大切な点だった。
小人達とは仲間になっても同種であってはいけない。
つまり、どらえもんに選ばれても、ネコ型ロボットになってはいけない。ということだ。

としたら、僕がなりたいのは、のび太か?
その考えは、僕自身、けっこう気に入った。
天井を見ながら、ニヤニヤしているとMの視線に気づいた。

「小人に選ばれし者は、小人に選ばれし者とSEXするんだ。」

物語の中で主人公の男の子は、やがて同じく小人に選ばれた女の子と結婚する。

「なんだ、てことはさ、おまえ、もう、選ばれてんじゃん。」とMが笑顔で言った。

めちゃくちゃな論理だ。つまり、SEXをしている僕たちは、選ばれし者であるというわけだ。
「後件の肯定」、、。論理学の講義は昨日受けたばかりだ。

でも、不思議と納得がいく言葉だった。
誤った論理から真実が導き出されることもあるのかもしれない。としたら、これは哲学だろうか?
哲学の講義は選択していない。

ふと見ると、またMが僕の横顔をおもしろそうに見ていた。
僕はたびたび勝手に物思いにはいってしまうのだけど、Mはいつもそれを黙って見ていてくれた。

「ねえ、もう一回していい?」僕は聞いた。
「いいけど、、もう、俺、でないかもよ。」
「いいよ。その分、僕が出すから。」

たしかに僕はすでに小人から選ばれていたのかもしれない。